先送りで安心出来ない制度改正の深刻な影響

先送りで安心出来ない制度改正の深刻な影響

今月前半はセミナーがなかったため、その捌け口としてコラムを書いているが、それもそろそろ終わりです。

新しく発足する研究会の準備も進めています。ただし、これは勉強会ではありません。参加の意思表明は多くの方から頂いていますが、今しばらくお待ち下さい。

さて、今日のテーマは先送りで安心出来ない制度改正の深刻な影響です。

介護保険部会での介護保険法改正審議が昨年12月で終了した。今後は、通常国会での改正介護保険法案の審議を経て今年6月には成立する。

結論としては、多くの改正項目は先送りされることになった。しかし、それらは次回以降に先送りされただけであることを認識すべきだ。

そして、今回成立する新しい介護保険法のキーワードは、「通いの場」である。これが至る所に出てくるのだ。行政改革のパートなので気づいていない方も多いが、今回の改正法の最重点項目の一つだ。

今回の改正で先送りされた項目の一つに、訪問介護の生活援助、通所介護の要介護1−2の軽度者の市町村への移行がある。

それが先送りになった理由は、市町村での受け皿となる総合事業などが、特に地方に於いて整備が遅れていることが大きな要因である。

現時点で市町村への移行を強行すると、確実に介護サービスを受けることが出来ない介護難民が発生する。

市町村事業をある程度、全国均一レベルにまで整備した上で移行すべきとの尤もな意見が多数である。

現状を見ると、平成28年から総合事業に移行した旧予防訪問介護、旧予防通所介護である第一号事業については、単に移行しただけなので全国の自治体で9割程度の整備が実現している。

しかし、サービスA(緩和した基準)、サービスB(住民主体)については全体的に整備が遅れ、特にボランティア中心のサービスBに至っては、10%弱の市町村しか実施していないとの資料が出されている。

そうした中で、今回の介護保険法改正で実施される財政インセンティブの強化は、市町村事業の促進を強いることが目的である。

介護保険法は地方分権の法律であり、市町村の意向が反映される。2018年からインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)が設けられ、市町村による高齢者の自立支援や介護予防の強化の促進に取り組んでいる。

制度改正に先だって、交付金について来年度予算では倍増の400億円が計上された。その取得基準に、2021年からは、いわゆるポイント制を取り入れる。

すなわち、通いの場、介護補助者、ボランティアの整備、獲得状況でポイントを算定し、市町村への交付金の支給に差を設ける仕組みを設けるのだ。

来年度で倍増されたことで市町村にとって、その獲得維持のためには、通いの場、ボランティアの整備を行う事が必要となる。実施を促進せざるを得ないだろう。

通いの場、介護補助者、ボランティアはすべて、総合事業などの市町村事業の整備に直結する項目だ。

これによって、ある程度、全国的に市町村事業の整備が整った時点で、訪問介護の生活援助、通所介護の要介護1−2の軽度者の市町村への移行議論が本格化して、移行の可能性が高まる。

さらには、総合事業の利用者が要介護認定を受けた後も、希望すれば総合事業の継続利用を可能とする改正がある。これも近い将来の軽度者の総合事業への移動を想定しての対応と考えることが出来る。

今回の制度改正では、先送りして議論を継続しながら、実はその実現のための布石が確実に打たれていることに注目すべきだ。

その中で、実施が確実視されている項目として、補足給付の見直しがある。また、高額介護サービス費の見直しが行われ、診療報酬に合わせて年収基準となる。

国民年金受給者などには厳しい改正となる。補足給付対象者を一定数抱える介護施設は要注意となる。負担増による長期滞在者の減少などに事前の対処が必要だ。

この辺りは、介護保険法が成立してからでは遅すぎる。介護施設経営が大きく変わる。

介護保険法の改正に続き、2021年度介護報酬改定の審議は、この春から社会福祉協議会給付費分科会で始まる。

今回の診療報酬の全体でのマイナス査定を受けて、非常に厳しいものとなることが予想される。

自立支援介護の実現と、成果型報酬への移行が議論の中心となるだろう。

その対象となる通所介護等においては、基本報酬の引き下げと成果型加算の新設が予想される。

AIがケアプラン作成を援助する科学的介護の促進で、導入促進のための居宅介護支援への加算の新設も期待される。介護ロポットやICT化促進のための加算の新設も議論の場に上ることは確実だ。

そして、ケアマネジャーへの新たな処遇改善加算の創設も具体化しそうだ。これは自民党の介護委員会でも前向きな方向が出されている。

また、社会福祉連携推進法人からも目が離せない。これは、介護事業の大規模化の類型であり、特に地方都市に於ける人材確保や事業拡大における期待が大きい。今後の社会福祉法人の事業展開にも大きな影響を与える可能性が高い。

今回の介護保険法改正は、先送りで安心している経営者は足下をすくわれる。そして、次の介護報酬改定は激震が走ることとなる。しっかりとセミナーなどで情報を得てアンテナを張って頂きたい。

© 小濱介護経営事務所 2020