人に伝える技術

人に伝える技術

検定試験があったとする。その段階は1級から3級で、3級が初級に位置し、1級が上級だ。ここに、それを教える教師がいる。Aは経験豊富。Bは経験値が低い。1級のクラスと、3級のクラス。貴方は、AとBの教師をどちらの担当に付けるだろうか。

答えは、1級のクラスは経験の浅いB,3級のクラスはベテランのAである。

物事を教えるときに、初心者に教えることがもっとも難しい。特に初心者は理解度が低いので、難しい事もやさしく噛み砕いて伝える必要がある。難しい事を、難しく伝えることは誰でも出来る。

お分かりだろうか、難しいことを、やさしく分かりやすく伝える事が出来るのは、そのことを深く理解して、自分のものとしているマスターだけである。

1級クラスは、生徒の経験値が高いので、難しい事を難しく伝える事しか出来ないBでも担当できる。Bは自分を上に見せるために難しい事をより難しく伝えることも多い。

一般社会でも、何事も難しく捉えて、専門用語を羅列して語る方が多いが、自分がまだ、お子ちゃまであることを暴露しているに過ぎない。専門用語を出来るだけ使わず、難しいことを相手に理解させてこそ、プロなのである。

新しく入った職員の研修は、出来れば経営者本人。少なくても経験豊富な幹部職員が担当すべき。一般職員の研修は誰でも良い。一般職員が担当することで、自ら学ぶし、他の職員から評価されることで経験値が上がる。

介護サービスでも専門用語を使いすぎる傾向がある。自分たちの提供しているサービスが如何に利用者にとって有益かを伝えたい自負はわかる。でも、多くの場合、マスターベーションになっていて同業者は分かっても、一般には分かりにくい表現が多い。

地域のケアマネジャーに営業活動を行っているだろう。その営業担当者が、施設の療法士や専門職であることも多い。そのとき、自分が気づかずに専門用語の羅列になっていないか。自分が分かっていても、相手は理解できないし、伝わらない。伝わらない営業は時間の無駄に過ぎない。

先日も居宅介護支援に伺ったときに、たまたまデイケアの療法士が営業に来た。耳をそばだてていると、生活行為リハビリの必要性を熱く語っている。この療法士は生活行為リハビリテーション実施加算を算定する利用者の紹介をして欲しいことは直ぐに分かった。

でもダメ!専門用語の羅列で、自分は分かっているのだろうが、伝わっていない。その話方では、利用者が改善して喜ぶ姿がまったく想像出来ないのです。御免なさい・・と、その場でレクシャーしようと思ったが出過ぎた行為なので控えたことがある。

これは専門職が陥りやすい罠なのだ。介護サービスも同様である。自分たちのホームページやチラシを、一般のご近所さんに見てもらって、自分たちが意図することが伝わっているかを確認して欲しい。残念ながら、殆ど伝わっていないことに落胆することになる。

高いお金を払ってコンサルタントを使わなくても、お金を掛けずに結果を出す方法は、ご近所さんにアドバイスをもらうこと。これ、本当に有効だから試して欲しい。

それが切っ掛けで、ご近所さんから利用者の紹介に繋がる可能性も無いとは言えない。

そして、営業トーク。これも古くからのコンサルティングツールとして、ロールプレイングがある。1人が地域のケアマネジャー役となって、日頃の営業トークを行う。その様子を他の職員が評価する。また、ビデオカメラを廻すことで自分の営業トークを確認出来る。古典的な方法だが、とても有効だ。

朝に朝礼などを行っているなら、全職員が持ち回りで、一日1人、3分間スピーチを担当させるのもお勧め。

3分は思った以上に長い。最初は1分でも、2分でも良い。話すテーマは、その日の新聞やニュースで感じた事。読んだ本や観た映画の感想。介護サービスで気づいた事。何でもいい。人の前で話す訓練と、自分の考えを纏める訓練。そして伝える訓練には最適である。

人に伝える技術は、自ら磨かないとモノに出来ない。それは個人能力だ。それが身についたら、一生モノの財産となる。

これから介護保険制度は厳しさを増し、マーケットでの競争は激化する。今、何が必要か。今一度考えて欲しい。

研究会で伝えたいことは沢山ある。着々と準備を進めている。今しばらく、お時間を頂戴することをお許しいただきたい。

 

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