介護業界で何故、ベンチャーが育たないのか

介護業界で何故、ベンチャーが育たないのか

介護関連マーケット、もしくはシニアビジネスマーケットは、2025年までは拡大の一途であり、それ以降少なくても2060年までは安定成長の市場である。

介護保険ビジネスも、スタートして20年しか経っていない未成熟の創業期である。業界を占有する大企業はまだ存在していない。上場企業の参入も大方の企業では終えている。しかし、経営母体が上場企業であるだけで、その事業基盤はM&Aなどでの事業拡大や、高齢者住宅を基盤とした囲い込み事業が中心である。

何が言いたいかと言うと、ベンチャーの参入という観点では可能性の宝庫だということだ。しかし、そのベンチャーが育っていない。FC事業は誕生しては衰退することを繰り返している。多くのFCは、その時点での法制度を最大限に活かした事業モデルを構築する。如何せん、制度は3年毎に変貌を遂げ、6年も経つと元の姿はすでに無い事が多い。即ち、介護保険をベースにしたビジネスモデルの寿命は長くても6年だと言うことだ。同じビジネスモデルで、事業を永続することは不可能だ。FC本部の多くは衰退する。衰退するFC本部の幹部には現状維持の指向が強くて新しさが無いからだ。これは介護関連の医療法人や社福法人にも言えることだが。。。

なぜ、介護業界からベンチャーが育たないのか。それは介護保険制度に於いて、経営にとっての最重要な成功のカギである三種の神器、「新商品開発」「価格設定」「広報PR」が、国の役割であり、介護事業経営者は頭を悩ませる必要が無い事が大きい。この三種の神器は、事業経営の要であり、差別化の最重要課題である。一般の経営者は24時間、365日、このテーマに頭を巡らせている。介護事業経営者は、この3つに頭を使うことが殆どない。介護事業経営者は、ある意味で国に牙を抜かれた状態に慣らされている。そのため、この3つに対する経験も知識もノウハウも無い経営者が多い。こんな状態で、ベンチャーが育つわけが無いのだ。

この点は、コンビニエンスストアと同じだ。コンビニのオーナーはFC本部のSVの指示に従えば、店舗の運営に知恵を絞る必要が無い。コンビニの収益差は、弁当の売り上げに掛かっている。オーダーした弁当が売れ残ると廃棄となって収益は悪化する。コンビニの店長の腕の見せ所は、ハッキリいって弁当のオーダー能力で、他はどこのコンビニも大差が無い。あとは、店員確保のルートを持っているかだ。大学の留学生のツテを持つ店は強い。留学生が仲間を紹介してくれるからだ。人材確保で重要なのは、人脈とネットワークだ。このような経営環境にあるコンビニエンスオーナーが、他の事業で経営を拡大している話は、まず聞かない。それどころか、現場に縛られて疲労困憊の極にある。この辺りは、介護事業経営者も同じだ。介護事業のコンビニ化のもう一つの意味である。

余談だが、

ローソンの元々の母体はダイエーである。そのダイエーが店舗縮小で希望退職を募ったとき、その退職金を元手にローソンを開業した元ダイエー社員が多かった。10年以上前にローソンを開業したオーナーは、元ダイエー社員が多い。すなわち、ローソンはダイエーの人員削減社員の受け皿でもあったのだ。

本題に戻る。

経営母体が上場企業である場合も同様だ。安定したビジネスモデルを選択した参入が最優先だったからだ。何故なら、誕生して20年に満たない介護業界には十分なエビデンスデータが存在しない。成功要素は、現状におけるベストなビジネスモデルを周到するしか無かった。

すなわち、上場企業も、開業したばかりの零細会社も、殆ど同じ立ち位置で事業を行っているというだ。資金力以外の差は殆どない。このことに気づいているだろうか。これは、私の講演に多くの上場企業関連の関係者が参加し、一部の法人との関わりがあるから断言できる。

介護関連ベンチャーとして成功するには、「新商品開発」「価格設定」「広報PR」への取組が不可欠だ。そこにオリジナリティが重要な要素として加わる。さらに介護業界では敵視されがちな「営業」だ。

介護分野へのベンチャー参入を支援する。すなわち事業拡大を志向して、オンリーワンを確立する。大手が気づく前に市場を支配する。その為には、動きながら考える事が重要。

成功事例の発表や探求が盛んだが、今の成功事例は将来の衰退モデルとしての参考に留めるべき。6年以上前に成功事例とされた介護事業所や施設の多くは、今は見る影も無い。高齢者住宅の成功事例は、倒産に陥ってたところも多い。

それ以前の問題として、人のモノマネで事業を行っても所前は2番煎じでしか無いのだ。決して1番にはなれない。では、なぜ成功事例に人が群がるのか。理由は考えなくて良いから。簡単だから。それは経営努力では決して無い。事業としての成長を放棄したと同じでは無いのか。

これは、今年中に取り組むべきテーマである。それは令和3年制度改正の方向が見えてきていて、今年中に新規事業に取り組む事で5年先まで見通せる環境にあるからだ。今年の起業は、最も制度改正リスクが少ない経営環境で事業がスタート出来る、6年に一度の好機なのだ。

出来ない理由を探せば、いくらでも出て来る。それで安心することになれていると、絶対に一歩は踏み出せない。やる理由は限られる。だから、やると決断する経営者は一部に限られるし、成功者は、さらにその中の一部に限られる。しかし、一歩を踏み出さない限り、その先は無い。

何をやるかでなく、誰とやるかだ。まずは、このテーマに関心のある経営者と共に、経営研究会などを企画しようか。結果は後から着いてくる。

© 小濱介護経営事務所 2020