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介護事業の経営リスク

介護事業の経営リスク

介護事業を営む上での経営リスクは、許認可事業であるが故の実地指導および監査。法人であるための税務調査。労働法規での労基署監査などがある。

最大の経営リスクは指定取消処分である。この点は、金融機関が最も恐れるポイントだ。業績悪化や倒産は決算書などから予測できるので、その傾向が見えると一気に回収優先に方向転換できる。しかし、指定取消は予測不能で、多額の不良債権を発生させることとなる。今後、介護事業の倒産が拡大すると、コンプライアンス対策とその報告が金融機関の融資条件となる可能性も高くなる。

介護保険を利用した事業運営のためには、行政の許認可が必要である。巷には多くの許認可事業があるが定期的に実地指導が入るのは、そこに税金が投入されているからだ。実地指導に関しての対策は以前のコラムに書いたので、そちらを参照して欲しい。

実地指導は基本的に一日で現地指導は終わる。そのために事業所の規模に応じて担当官の数を調整する。中小事業所は基本的に2人体制。大規模や介護施設は4人から6人という構成となる。ごく希に、10人近い大所帯になることがあるが、これは会計検査院の監査を兼ねる場合である。このとき、役所は事業所の状態を、会計検査院の担当官は役所をチェックしている。故に、この場合は比較的優良な施設が選ばれるために大きな問題が起こることは少ない。

実地指導がもう3日も続いてるんです。。たまに聞く話だ。実地指導は1日で現地指導は終わることは先に書いた。2日以上続く場合は、監査に切り替わる直前と考えるべきだ。実地指導と監査は別物だ。監査は大きな不正などの問題の疑いが浮上すると実施される。これは指導では無くて、捜査だ。書類はダンボールに入れて押収され、管理者や職員は適時に役所に呼び出されて事情聴取を受けることとなる。その先にあるのは行政処分である。

実地指導で介護報酬が返還となる。これは処罰ではない。報酬請求の誤りが判明したので事業所が自ら自主返還する形を取る。よって、手続は過誤申請の上で再請求となる。この場合、罰金などは付かない。

監査となって行政処分を受けた場合、役所から返還請求され、この場合は罰金として不正金額の40%が上乗せされる。よって、行政処分を受けると巨額の返還を余儀なくされるのは、この罰金が原因だ。

指定取り消し等の行政処分を受けた場合、その時の役員は5年間に渡って、法人の役員や人員基準上の管理者、責任者に就くことが出来ない。これは行政処分になった法人だけではなく、介護事業の許認可を受けたすべての法人が対象となる。

また、連座制というルールもある。複数の事業や拠点を運営している時、一箇所の拠点が行政処分を受けたとき、その拠点に対して本日機能を持つ部署が不正を指導したり、その隠匿を行った場合は。不正を行った拠点だけでなく、法人全体が行政処分となるルールだ。近年は連座制を適用されるケースも増えて来ている。今のところ、FC本部が適用されることは無いが、大きな不正に本部が絡む事例が出た場合、適用範囲が拡大することも考えられる。

次に税務調査である。社会福祉法人は法人税の申告が無いから関係無いと考えていると足下をすくわれる。介護事業で税金の追徴を受けるケースは、一般的な法人税や消費税を別とすると、源泉所得税が際立って多いことをご存じだろうか。訪問介護に登録ヘルパーがいる。登録ヘルパー複数の事業所と契約することも多く、どちらかというと外注という見方が強い。そのため給与から源泉徴収をしていない。年末調整に加えていないなどのケースを見かける。これは一般の非常勤職員でも有り得るだろう。ご主人の扶養に入るために年末調整を出さないなどの脱税補助もまれに見かける。

すべての介護事業に於いて。人員基準上に配置する職員は、雇用契約を結んだ上で管理者の指揮命令下に置くことが定められている。その職員が外注であり、雇用関係が無い場合、資格の無い者が介護サービスを提供したとして人員基準違反で行政処分となる。この処分理由はよく見かけると思う。

と言うことは、登録ヘルパーや非常勤職員は雇用関係が存在することとなる。雇用関係がある場合、給与から源泉徴収する義務は法人側にある。よって、税務調査において、この部分が指摘され、本人から源泉徴収をしていないとしても、源泉徴収を行ったとして計算して法人が相当分の源泉徴収を納付することが求められる。この金額は、数百万円となった事例も多く聞く。

当然に本人分の年末調整もやり直しとなる。その結果、本人に都道府県や市町村の地方税の納付書が届いたり、ご主人の扶養から外れるなどの修正を余儀なくされる。所得税の源泉徴収や年末調整は、社会福祉法人も対象であるので、この点に限定した税務調査が行われている。このあたり、会計事務所や社会保険労務士におんぶに抱っこ状態だと危険だ。外部委託していても、責任は施設側にある。

源泉所得税の問題では、交通費に関する追徴も多い。一般の会社も同様だが、職員の交通費を一ヶ月の定期券代で支給していることも多い。そして、その部分の交通費は非課税として源泉所得税対象外とする。しかし、介護施設などは勤務が不定期であるので、自家用車での通勤も多い。盲点は、公共交通と自家用車通勤では交通費の非課税枠の上限が異なることだ。この点を税務調査で指摘されて、非課税として扱っていた交通費分の所得税を追徴されるケースも多い。

もう一点、居宅介護支援が地域包括センターから予防ケアプランの外部委託を受けるケースである。介護保険収益は消費税は非課税である。しかし、地域包括センターからの外部受託収入は、消費税は課税収入となるのだ。よって、保険外サービスなどの課税収入と合算した金額が1000万円を超えると、消費税の課税事業者となって消費税の納付義務が生じる。この点は、未だに盲点であり、このことを認識していない会計事務所も多いようだ。社会福祉法人にとっても同様で、外部受託収入は収益事業扱いである場合があることにも注意が求められる。

このあたり、介護保険制度や税法を知らない社会保険労務士などに給与計算や年末調整を外部委託する場合は特に注意が必要である。ただ、外注先が会計事務所であっても介護事業を知らないと同様であるが、、専門士業は介護保険制度の対応力、専門性を最優先して契約すべき理由はここにある。

最後に労基署の監査だ。一般的に労基署の監査は、一定規模以上の法人で無いと入らないと言われる。しかし、介護事業は該当しないようで、小規模な事業所に監査が入り、残業代の未払いなどの行政指導を受けたケースを耳にする。労基署の監査の原因が、職員や元職員からの告発であることも多く、注意が必要だ。

介護事業を営みかつ事業を拡大する場合、目立つが故に、これらのコンプライアンスリスクが拡大する。しかし、多くの場合、事業拡大に集中するが故に後手後手になりがちである事も以前のコラムに書いた。その辺り、万全と言える体制をとっているだろうか。

専門家と顧問契約していても、言い訳にはならない。専門家が身代わりになることもない。せいぜい、誤った指導に対して損害賠償請求するのが関の山だ。専門家やブレーンの選び方は慎重を期すべきだし、全ては経営者の自己責任なのだ。

先送りで安心出来ない制度改正の深刻な影響

先送りで安心出来ない制度改正の深刻な影響

今月前半はセミナーがなかったため、その捌け口としてコラムを書いているが、それもそろそろ終わりです。

新しく発足する研究会の準備も進めています。ただし、これは勉強会ではありません。参加の意思表明は多くの方から頂いていますが、今しばらくお待ち下さい。

さて、今日のテーマは先送りで安心出来ない制度改正の深刻な影響です。

介護保険部会での介護保険法改正審議が昨年12月で終了した。今後は、通常国会での改正介護保険法案の審議を経て今年6月には成立する。

結論としては、多くの改正項目は先送りされることになった。しかし、それらは次回以降に先送りされただけであることを認識すべきだ。

そして、今回成立する新しい介護保険法のキーワードは、「通いの場」である。これが至る所に出てくるのだ。行政改革のパートなので気づいていない方も多いが、今回の改正法の最重点項目の一つだ。

今回の改正で先送りされた項目の一つに、訪問介護の生活援助、通所介護の要介護1−2の軽度者の市町村への移行がある。

それが先送りになった理由は、市町村での受け皿となる総合事業などが、特に地方に於いて整備が遅れていることが大きな要因である。

現時点で市町村への移行を強行すると、確実に介護サービスを受けることが出来ない介護難民が発生する。

市町村事業をある程度、全国均一レベルにまで整備した上で移行すべきとの尤もな意見が多数である。

現状を見ると、平成28年から総合事業に移行した旧予防訪問介護、旧予防通所介護である第一号事業については、単に移行しただけなので全国の自治体で9割程度の整備が実現している。

しかし、サービスA(緩和した基準)、サービスB(住民主体)については全体的に整備が遅れ、特にボランティア中心のサービスBに至っては、10%弱の市町村しか実施していないとの資料が出されている。

そうした中で、今回の介護保険法改正で実施される財政インセンティブの強化は、市町村事業の促進を強いることが目的である。

介護保険法は地方分権の法律であり、市町村の意向が反映される。2018年からインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)が設けられ、市町村による高齢者の自立支援や介護予防の強化の促進に取り組んでいる。

制度改正に先だって、交付金について来年度予算では倍増の400億円が計上された。その取得基準に、2021年からは、いわゆるポイント制を取り入れる。

すなわち、通いの場、介護補助者、ボランティアの整備、獲得状況でポイントを算定し、市町村への交付金の支給に差を設ける仕組みを設けるのだ。

来年度で倍増されたことで市町村にとって、その獲得維持のためには、通いの場、ボランティアの整備を行う事が必要となる。実施を促進せざるを得ないだろう。

通いの場、介護補助者、ボランティアはすべて、総合事業などの市町村事業の整備に直結する項目だ。

これによって、ある程度、全国的に市町村事業の整備が整った時点で、訪問介護の生活援助、通所介護の要介護1−2の軽度者の市町村への移行議論が本格化して、移行の可能性が高まる。

さらには、総合事業の利用者が要介護認定を受けた後も、希望すれば総合事業の継続利用を可能とする改正がある。これも近い将来の軽度者の総合事業への移動を想定しての対応と考えることが出来る。

今回の制度改正では、先送りして議論を継続しながら、実はその実現のための布石が確実に打たれていることに注目すべきだ。

その中で、実施が確実視されている項目として、補足給付の見直しがある。また、高額介護サービス費の見直しが行われ、診療報酬に合わせて年収基準となる。

国民年金受給者などには厳しい改正となる。補足給付対象者を一定数抱える介護施設は要注意となる。負担増による長期滞在者の減少などに事前の対処が必要だ。

この辺りは、介護保険法が成立してからでは遅すぎる。介護施設経営が大きく変わる。

介護保険法の改正に続き、2021年度介護報酬改定の審議は、この春から社会福祉協議会給付費分科会で始まる。

今回の診療報酬の全体でのマイナス査定を受けて、非常に厳しいものとなることが予想される。

自立支援介護の実現と、成果型報酬への移行が議論の中心となるだろう。

その対象となる通所介護等においては、基本報酬の引き下げと成果型加算の新設が予想される。

AIがケアプラン作成を援助する科学的介護の促進で、導入促進のための居宅介護支援への加算の新設も期待される。介護ロポットやICT化促進のための加算の新設も議論の場に上ることは確実だ。

そして、ケアマネジャーへの新たな処遇改善加算の創設も具体化しそうだ。これは自民党の介護委員会でも前向きな方向が出されている。

また、社会福祉連携推進法人からも目が離せない。これは、介護事業の大規模化の類型であり、特に地方都市に於ける人材確保や事業拡大における期待が大きい。今後の社会福祉法人の事業展開にも大きな影響を与える可能性が高い。

今回の介護保険法改正は、先送りで安心している経営者は足下をすくわれる。そして、次の介護報酬改定は激震が走ることとなる。しっかりとセミナーなどで情報を得てアンテナを張って頂きたい。

訪問介護職の有効求人倍率 13倍に上昇

地域包括ケアシステムの根幹を成す訪問介護がこの惨状。地域包括ケアシステムが崩壊します。

その上位概念である地域共生社会の実現も同様です。

戦術無き戦略。やはり、理念だけでは何も実現しない。このままでは、ただの絵に描いた餅になります。

介護は会議室で起きているのでは無いのです。

理屈だけこねて、極一部の優良事例とかを掲げても何も改善しません。

もっとも、現場の声が、どこまで会議室に届いているのかという問題もあります。

誰が戦略を立てて、戦術を練るのか。その部分、、余りにも厚生労働省におんぶに抱っこである業界にも責任があると言えます。

介護をやったことない厚生労働省に、現場を理解することを期待することが無理なのです。役所はエビデンスデータがないと考えてもくれない。

誰がやるのか。自分たちでやるしかありません。出来ないと、冗談抜きで退場の憂き目に遭うことになります。

これは訪問介護だけの問題ではなく、業界全体の問題。そして、確実に小規模事業者から人手不足倒産の波に飲み込まれていく。

人が全くいないのでは無く、訪問介護を選ばずに、他の事業に行っているだけです。何故なのか。この部分を考えて見ることで、他の介護サービスの対策にも繋がります。

要は、自分自身が求職者だったら、自分の会社に履歴書を送るかという部分です。もし、他の会社を選ぶとしたら、何故、自分の会社に送らないかを考える。そこが問題点なのだから、そこを改善すればいい。改善できないのならば、早期に撤退して他分野に移ることも視野に入ります。

介護業界は自由競争社会です。国は個々の会社を助けることはしません。それどころか、優良な法人だけ残れば良いというスタンス。その法人を助けなくても代わりは沢山あるのです。

介護保険制度には自浄作用が働いています。質の劣る事業者や力の無い事業者は自然に浄化される仕組みです。だから、参入障壁は低くて誰でも安易に許認可は取れるし、撤退も自由です。

制度の恐ろしさは、会社のレベルが高くても低くても、どこのサービスを使っても料金は同じという所です。例えば訪問介護の入浴介助の自己負担は大体、一回400円程度。サービスの質が高くても、低くても400円払うと言うこと。ということは、この400円を安く感じるか、高く感じるかになります。高く感じる低いレベルのサービスしか提供出来ない会社は利用者が伸びずに淘汰されていく。これが自浄作用です。

しかし、言い換えると、ビジネス的には事業拡大のビッグチャンスでもあります。人材の取り合いなのだから、取ったもの勝ち。勝ち組は、人材だけで無く市場も取れる。それが自由競争社会の掟。

すべては自己責任です。すなわち、経営者の技量が問われると言うこと。

結論は、利用者が使いたい会社が、職員が勤めたい会社であるということ。

文句や不満を言う時間があったら、まず動きましょう。


訪問介護職の有効求人倍率 13倍に上昇 NHKニュース

https://www3.nhk.or.jp/n…/html/20200110/k10012241861000.html

なんちゃって経営者からの脱却

なんちゃって経営者からの脱却

経営と運営は何がちがいますか?Google のネット辞書では、経営は、事業を営むこと。 規模を定め工夫をこらして物事を行うこと。運営は、組織・機構などを働かせること。と出てきます。

事業とは、生産・営利を目的として経営する仕事。企業または実業。とされています。

簡単に言うと、経営とは利益を最大限に得るために、知恵を絞って計画を立てて実行すること。運営は、職員の勤務シフトや送迎、サービスが予定通り完了するための管理だと言えます。もしくは、計画を実現するためのプロセスを実行することです。

では、戦略と戦術は何がちがいますか?

戦略は戦争の総合的な準備・計画・運用の方策。
戦術は戦闘を行う上の方策。転じて、ある目標を達するための方策。と出てきます。

戦略は、利益を最大限に得るために、知恵を絞って計画を立てること戦術は、その計画を実現するためのアクションプランを言います。

よって、経営者の仕事は、計画をたてること。管理者の仕事は、計画を実現するために実行することです。しかし、現実は多くの「なんちゃって経営者」は計画を立てることをせずに、職員の勤務シフトや送迎、サービスが予定通り完了するための管理である運営だけを行っているのが実態です。それは経営者の仕事では無く、管理者の仕事です。

経営は戦争です。経営者は常の虎の背中に乗っています。一瞬でも気を抜いたら、虎から転げ落ちて食い殺されてしまいます。だから、常に頭をフル回転させて戦争に負けないように(虎から落ちないように)知恵を絞り続けないといけません。その点、管理者や職員は気楽です。TOPが虎から落ちても、他に移ればいいのです。経営者は常に孤独です。

経営は押し相撲と同じです。競合相手と常に押し合っていないといけません。力を抜いたり、スタミナで負けると土俵の外に押し出されて負けてしまします。

介護の運営基準にケアマネジメントプロセスがあります。アセスメント〜プランニング〜カンファレンス〜モニタリング〜見直し・改善です。介護サービスは職員レベルで、このプロセスの実践が義務づけられています。経営者は、自分の経営環境をアセスメントし、それを踏まえた経営計画を作り、職員に趣致するための会議を開き、定期的に計画の推進状況を確認する会議を開き、場合によって修正や見直しを行っていますか?

これ、職員が日常的に行っている事です。

しかし、多くの経営者はやっていません。社会福祉法人は義務的に経営計画を作りますが、その殆どは前期のコピーレベルであって、意味をなしません。多くの場合、ゴミです。

多くの経営者は、アセスメントもせず、介護計画を作らず、職員と情報共有もせず、進行状況の確認も、見直しもせずに介護サービスを提供すると同じ事を、自らの経営でやっていることに気づくべきです。

いや、経営計画は作っています。という方も多いでしょう。その計画は誰が作りましたか?会計事務所に言われて、仕方なく、会計事務所に作ってもらったという計画は、ただの数字の羅列に過ぎません。殆ど役に立たない。

経営計画で重要なのは、数字では無く、具体的なアクションプランです。

経営計画の策定は、職員を育てる場としても重要です。職員レベルで、部署毎のボトムアップの計画を作らせます。それを実現するためのアクションプランも考えさせます。計画を作るためには、現状の分析と問題点の把握が必須です。この作業は、職員に知恵を絞らせる訓練として重要です。

経緯者は、自らの状況分析と、今後の経営環境の予想に対応したトップダウンの計画を作り、具体的なアクションプランを纏めます。

経営者と職員が参加する経営計画検討会議で、トップダウンとボトムアップの計画を付き合わせ、最終計画に纏めます。参加する職員は各部署の責任者です。最終的には、トップダウンの計画に落ち着くことが多いですが、これまでのプロセスが重要です。さらに、職員が計画策定に直接に関わっているということも重要です。そこに責任が生じるからです。上からの押しつけだけでは、不満しか起きません。

このプロセスを経て最終的な経営計画が出来たら、3月に一度のペースで、計画の進行を確認する会議を設けます。ココで、進捗状況を確認して計画の見直しを含めて検討します。

これが経営者の仕事の一部です。この仕組みが根付いた会社は強くなり、発展します。仮に事業上の失敗があっても、すぐにリカバリが可能です。どんぶり勘定の経験・勘・度胸の経営からの脱却が急務です。

コンプライアンス対策は日常の中で

コンプライアンス対策は日常の中で

急成長する介護事業ほど、足下が疎かになりがちだ。行け行けで、直接に収益に関わる部分に注視しすぎて、コンプライアンスや経理、労務といった間接部門が追いついていない。その結果、実地指導(最悪は監査で行政処分)、税務調査、労基署監査で痛い目にあう。間接部門は最初に仕組みさえ整えておくと、あとは定期的なチェック機能を設けることで管理出来る。

昨年の5月に新しい運営指針が発出されて以来、実地指導は半日型が明らかに増えている。これは全国各地を廻っていて感じる。また、抜き打ち型も確実に増加傾向だ。実地指導のかたちは、年々変化が見られる。

介護保険制度が始まった当初は、高飛車でいかにもお役所的な指導が目に付いた。施設に到着するなり、足を組んで恫喝するといった担当者も見受けられた。この状況に厚労省は平成20年頃だったか、通知を出している。即ち、実地指導はあくまでも指導であって、監査では無いと。明らかに、上から目線の高圧的な実地指導が全国的な問題となっていた。

介護保険制度は、難しい、複雑だ。ボリュームが多くて大変だというイメージが強い。事務負担軽減と言いながら、年々制度の複雑さが増している印象が強い。そのイメージを助長しているものが、多くの施設の本棚に鎮座している3冊の書籍である。いわゆる、赤本。青本。緑本。そう、介護報酬の解釈である。

確かに、介護報酬の算定要件は複雑でボリュームが多い。しかし、人員基準、設備基準、運営基準については共通項も多く、実はシンプルな構成になっている。サービス毎に同じことを書くから、赤本のボリュームになっているだけだ。

シンプルな構成とは、ケアマネジメントプロセス、整合性、計画と記録を三本柱とする仕組みだ。これは10年以上前から、セミナーなどで伝えているし、書籍の構成もこの三本柱に基づいて書いている。

新しい運営指針は7つのサービスにおいて標準確認項目と文書が出されたが、他のサービスもこの7つのサービスを参考に実施することになっている。なぜ、他のサービスが参考に出来るのか。

7つのサービスの標準確認項目と文書を横に並べて見比べて欲しい。そうすると7〜8割りの範囲で、まったく同じ事が書かれていることに気づくだろう。残りの3割程度だけが、サービス単体の相違に基づく項目だ。介護施設の特養と老健を比較しても、全く異なる性格の施設であるに関わらず、その違いは特養が3項目多いに過ぎない。あとは一言一句、同じなのだ。

なぜ、基本的な指定基準がシンプルで共通項が多いのか。それは行政指導を実施する窓口が地方自治体であることが大きな理由だ。地方分権を取る介護保険制度において、介護保険行政の担当者は平均的に3年で配置転換される。これは、役人の不正や汚職を防ぐリスク管理の側面が強い。実際に10年近くも介護保険行政に関わった埼玉県和光市の幹部職員は逮捕される事件を昨年に起こしている。

実質3年では、制度の全体像を把握した頃に次の部署に移ることとなる。また、4月に配置転換で介護保険部署に異動した担当官は2ヶ月後の6月には実地指導を担当することも多い。4月に初めて介護保険に触れたのに、なぜたった二ヶ月で実地指導が出来るのか。それは、サービスの種類に関係無く、チェックポイントが同じであることに尽きる。よって、実地指導は必ず複数の職員で担当し、決して1人での実地指導は無い。そして、経験の浅い担当官が指定基準関係を担当し、ベテラン担当官が介護報酬など熟練を要する担当を務める。熟練と行っても、たったの3年程度だが。

実地指導を含むコンプライアンス対策は、一部の幹部職員だけが研修に参加して理解しても意味が無い。全職員レベルでケアマネジメントプロセス、整合性、計画と記録を三本柱を熟知するように内部研修を組むべきだ。

加算を筆頭とする介護報酬も、青本を全て学ぶ必要は無い。自分の施設が算定する報酬の算定要件だけで良いのだから、せいぜい片手くらいで済むだろう。3年に一回の制度改正の度に、研修カリキュラムを変えれば済むことだ。

それを年に数回で十分だから、定期的に一般職員の研修計画に位置づけて実施する。それを継続する事で、施設のコンプライアンス対策は飛躍的に向上する。職員も自信を持って日常業務を行う事が出来る。

事業拡大を志向する場合、施設内にコンプライアンス部門を設置して内部監査を定期的に行うことも特別では無くなった。その場合も、一般職員への定期的な研修を実施すべきだし、定期的に外部からの監査チェックを実施すべきだ。内部だけでは、どうしても身内ということもあって詰めが甘くなる。

これは、介護保険制度だけではなく、障害福祉制度も同じである。障害福祉制度も同様に基本的な仕組みはシンプルになっている。ケアマネジメントプロセス、整合性、計画と記録の三本柱は同じなのだ。ただ、障害福祉では未だにセルフプランが多いのだが。

昨年は京都府の2箇所の自治体の社協で印鑑不正使用の問題が発覚した。介護職員処遇改善加算の返還指導も急増している。人材難を反映した職員の水増しや架空職員が発覚しての行政処分も依然として多い。

実地指導を受けたら、お土産を渡さないといけない。これは実はよく聞く言葉だ。お土産とは、多少の介護報酬返還を意味する。実地指導に限らず、税務調査でも良く聞く言葉だ。担当官も成績があるので、手ぶらでは帰れないから。冗談ではない。お土産なんて必要無いのだ。

実地指導の中で問題が出ないと、調査官のチェックは時間の経過と共に重箱の隅をつつくように厳しくなる。それが嫌だから言っている部分もあるのだろう。しかし、それを乗り越えると待っているのは、空欄だけの指導結果通知書である。即ち、指導項目ゼロである。

実際に私が直接に指導する複数の介護老人保健施設などは、この空欄だけの指導結果通知書を何度も受け取っている。それが当たり前と考えなければならない。しかし、それは日頃の努力の積み重ねでもある。実地指導の通知が来てから焦って準備しても間に合うわけが無い。

コンプライアンス対策は日常的な積み重ねが重要なのだ。大事になってから後悔しても遅すぎる。実地指導は決して甘くは無いが、事前対策は確実に行うことで、問題は問題では無くなる。

人に伝える技術

人に伝える技術

検定試験があったとする。その段階は1級から3級で、3級が初級に位置し、1級が上級だ。ここに、それを教える教師がいる。Aは経験豊富。Bは経験値が低い。1級のクラスと、3級のクラス。貴方は、AとBの教師をどちらの担当に付けるだろうか。

答えは、1級のクラスは経験の浅いB,3級のクラスはベテランのAである。

物事を教えるときに、初心者に教えることがもっとも難しい。特に初心者は理解度が低いので、難しい事もやさしく噛み砕いて伝える必要がある。難しい事を、難しく伝えることは誰でも出来る。

お分かりだろうか、難しいことを、やさしく分かりやすく伝える事が出来るのは、そのことを深く理解して、自分のものとしているマスターだけである。

1級クラスは、生徒の経験値が高いので、難しい事を難しく伝える事しか出来ないBでも担当できる。Bは自分を上に見せるために難しい事をより難しく伝えることも多い。

一般社会でも、何事も難しく捉えて、専門用語を羅列して語る方が多いが、自分がまだ、お子ちゃまであることを暴露しているに過ぎない。専門用語を出来るだけ使わず、難しいことを相手に理解させてこそ、プロなのである。

新しく入った職員の研修は、出来れば経営者本人。少なくても経験豊富な幹部職員が担当すべき。一般職員の研修は誰でも良い。一般職員が担当することで、自ら学ぶし、他の職員から評価されることで経験値が上がる。

介護サービスでも専門用語を使いすぎる傾向がある。自分たちの提供しているサービスが如何に利用者にとって有益かを伝えたい自負はわかる。でも、多くの場合、マスターベーションになっていて同業者は分かっても、一般には分かりにくい表現が多い。

地域のケアマネジャーに営業活動を行っているだろう。その営業担当者が、施設の療法士や専門職であることも多い。そのとき、自分が気づかずに専門用語の羅列になっていないか。自分が分かっていても、相手は理解できないし、伝わらない。伝わらない営業は時間の無駄に過ぎない。

先日も居宅介護支援に伺ったときに、たまたまデイケアの療法士が営業に来た。耳をそばだてていると、生活行為リハビリの必要性を熱く語っている。この療法士は生活行為リハビリテーション実施加算を算定する利用者の紹介をして欲しいことは直ぐに分かった。

でもダメ!専門用語の羅列で、自分は分かっているのだろうが、伝わっていない。その話方では、利用者が改善して喜ぶ姿がまったく想像出来ないのです。御免なさい・・と、その場でレクシャーしようと思ったが出過ぎた行為なので控えたことがある。

これは専門職が陥りやすい罠なのだ。介護サービスも同様である。自分たちのホームページやチラシを、一般のご近所さんに見てもらって、自分たちが意図することが伝わっているかを確認して欲しい。残念ながら、殆ど伝わっていないことに落胆することになる。

高いお金を払ってコンサルタントを使わなくても、お金を掛けずに結果を出す方法は、ご近所さんにアドバイスをもらうこと。これ、本当に有効だから試して欲しい。

それが切っ掛けで、ご近所さんから利用者の紹介に繋がる可能性も無いとは言えない。

そして、営業トーク。これも古くからのコンサルティングツールとして、ロールプレイングがある。1人が地域のケアマネジャー役となって、日頃の営業トークを行う。その様子を他の職員が評価する。また、ビデオカメラを廻すことで自分の営業トークを確認出来る。古典的な方法だが、とても有効だ。

朝に朝礼などを行っているなら、全職員が持ち回りで、一日1人、3分間スピーチを担当させるのもお勧め。

3分は思った以上に長い。最初は1分でも、2分でも良い。話すテーマは、その日の新聞やニュースで感じた事。読んだ本や観た映画の感想。介護サービスで気づいた事。何でもいい。人の前で話す訓練と、自分の考えを纏める訓練。そして伝える訓練には最適である。

人に伝える技術は、自ら磨かないとモノに出来ない。それは個人能力だ。それが身についたら、一生モノの財産となる。

これから介護保険制度は厳しさを増し、マーケットでの競争は激化する。今、何が必要か。今一度考えて欲しい。

研究会で伝えたいことは沢山ある。着々と準備を進めている。今しばらく、お時間を頂戴することをお許しいただきたい。

 

介護はサービス業である

介護はサービス業である

介護はサービス業というと認識が必要である。介護は施しでは無い。利用者はお金を払って介護施設や介護事業所が提供するサービスを買っている。すなわち、利用者はお客様なのである。この認識が重要であるし、職員に理解させる必要がある。

利用者は、介護保険料を払っている。そして要介護状態になったとき、保険事故として介護保険を利用して介護サービスを受ける。これは、生命保険の入院給付や交通事故を起こしたときの自動車保険同様に保険事故なのだ。利用者は当然の権利として介護保険を利用出来る。

訪問介護で入浴介助では通常は身体2を適用して、利用者は約400円程度を支払っている。これは、介護保険で3600円が給付されるから一割の400円で済むのであって、実際は4000円を事業所に支払っている。それが、職員1人1人の給与となっているのだ。

日頃から職員は、利用者からお金を頂いてサービスを提供させて頂いていることを認識しているだろうか。ここで注意すべきは、「サービスを提供させて頂いている」」ことだ。ボランティアや施しで、介護をしてあげているのではない。

そもそも、職員は自分が今、提供しているサービスに利用者がいくら払っているか知っているのだろうか。知らないから、利用者への不満が出るのだろう。

この部分の理解が薄いと、利用者にため口で話したり、ちゃん付けで呼んだりする。それがエスカレートすると、暴言や暴力に繋がっていく。例えば、レストランに行ったとき、店員からため口で話しかけられたり、ちゃん付けで呼ばれたら、どう感じるだろうか。ましてや、暴言や暴力を振るわれたら。

ハッキリ言えば、職員の育成と教育は経営者の義務である。しかし、人材不足と多忙を理由として、その部分を怠ってきたツケが表面化して来ている。

特に人の育成は、介護業界に限らず中小零細にとっては不得手な分野である。と言うことは、その部分に力を注ぐだけでも、他の事業所との差別化に繋がるし、それを行う事で利用者への職員暴力などのリスクを大きく減らす事が出来ることを認識すべきだ。

ホスピタリティ、お持てなしという言葉が話題となって久しい。

例えば、お辞儀一つをとっても、いくつかの方法がある。その中でも最低限で身に付けるべきは、三息の礼である。

お辞儀をしながら息を吸い、45度の角度で身体を止めて間を取り息を吐く。そして、息を吸いながらゆっくりと身体を起こす。これは、基本中の基本である。息を吸いながら、ゆっくりと身体を倒すことで、背筋が伸びて綺麗な形でお辞儀が出来る。

この呼吸法を実践すると、心も安定して落ち着つくことが出来る。対人能力の向上にも繋がる。

相手の目を見て話す。お茶出しは、身体を屈めるのでは無く、膝をついてお茶を出す。名刺の出し方と受け方。上座と下座。ハッキリ話す発声法。クレーム処理の仕方等など

このように、一般企業で普通に行っている接遇訓練を、一体、どれだけの介護施設で実施し、実践しているのか。。多くの場合、やっていない。それは施設に入れば分かる。

やっていても、形だけでは駄目だ。経営者や幹部職員自らが率先して実行しないと根付かない。出来ない職員には、すぐに注意する。それが出来ないと、ただの時間と金の無駄にすぎない。

 

多くの介護施設の研修は、実績有りきで結果が出ないのは、上の人間が理解していないことに尽きる。

しっかりとした接遇訓練を行い、実践する施設は、訪問しても気持ちが良い。逆にこちらが恐縮する。そのような施設は、営業に行っても好評価で結果も伴うのだ。

人としてあるべき姿を、今一度考えて見る必要があるということだ。

利用者が増えない、紹介が来ない。営業で結果がでない。多くの場合、その原因は自分たちにある。同時に、解決策も明らかだ。やるかやらないかである。

私が長年、会計事務所に居たことはご存じの方も多いだろう。では、会計事務所で何をやっていたのか。もちろん会計事務所としての税務処理や毎月のように税務調査の立会を行ってきた。これが、今の実地指導支援に繋がっている。

それと同時に、併設の経営コンサルタント会社の役員として、一般的な経営コンサルティングとともに、顧問先企業の新入職員研修、接遇訓練、幹部職員講座、経営計画策定と会議指導。起業支援から倒産会社の債権者会議同席などを直接担当してきた。

その後、別の士業会社でも役員として、人材派遣、有料職業紹介所などを運営すると共に、訪問介護、障害福祉事業所を立ち上げて運営し(ここでは荒井信雄先生に大変お世話になった。)、介護施設の介護報酬、障害福祉報酬の請求事務代行も立ち上げてきた。

介護老人保健施設の経営支援は長期にわたって担当させて頂いた。療養病床から転換老健への転換支援も担当した。それらの積み重ねが、今に繋がっている。

という、自分のルーツを最近になって思いだした(笑)

自分も忙しさを理由として、自らの活動を制限して来た。今年は、これまで自ら封印してきたノウハウも提供していきたいと思う。

それ以上に、この3年間は厄年で新しい事を控えていた。その厄もやっと抜けた。

いろいろな部分を詰め込んだ研究会。多くの方から賛同や参加希望を頂いています。その運営でまだ迷いがある。小規模でとりあえず始めるか。最初からある程度の規模で始めるか。どこでやるか。誰とやるか。

もう少し、考えを纏める時間をください。。

介護業界で何故、ベンチャーが育たないのか

介護業界で何故、ベンチャーが育たないのか

介護関連マーケット、もしくはシニアビジネスマーケットは、2025年までは拡大の一途であり、それ以降少なくても2060年までは安定成長の市場である。

介護保険ビジネスも、スタートして20年しか経っていない未成熟の創業期である。業界を占有する大企業はまだ存在していない。上場企業の参入も大方の企業では終えている。しかし、経営母体が上場企業であるだけで、その事業基盤はM&Aなどでの事業拡大や、高齢者住宅を基盤とした囲い込み事業が中心である。

何が言いたいかと言うと、ベンチャーの参入という観点では可能性の宝庫だということだ。しかし、そのベンチャーが育っていない。FC事業は誕生しては衰退することを繰り返している。多くのFCは、その時点での法制度を最大限に活かした事業モデルを構築する。如何せん、制度は3年毎に変貌を遂げ、6年も経つと元の姿はすでに無い事が多い。即ち、介護保険をベースにしたビジネスモデルの寿命は長くても6年だと言うことだ。同じビジネスモデルで、事業を永続することは不可能だ。FC本部の多くは衰退する。衰退するFC本部の幹部には現状維持の指向が強くて新しさが無いからだ。これは介護関連の医療法人や社福法人にも言えることだが。。。

なぜ、介護業界からベンチャーが育たないのか。それは介護保険制度に於いて、経営にとっての最重要な成功のカギである三種の神器、「新商品開発」「価格設定」「広報PR」が、国の役割であり、介護事業経営者は頭を悩ませる必要が無い事が大きい。この三種の神器は、事業経営の要であり、差別化の最重要課題である。一般の経営者は24時間、365日、このテーマに頭を巡らせている。介護事業経営者は、この3つに頭を使うことが殆どない。介護事業経営者は、ある意味で国に牙を抜かれた状態に慣らされている。そのため、この3つに対する経験も知識もノウハウも無い経営者が多い。こんな状態で、ベンチャーが育つわけが無いのだ。

この点は、コンビニエンスストアと同じだ。コンビニのオーナーはFC本部のSVの指示に従えば、店舗の運営に知恵を絞る必要が無い。コンビニの収益差は、弁当の売り上げに掛かっている。オーダーした弁当が売れ残ると廃棄となって収益は悪化する。コンビニの店長の腕の見せ所は、ハッキリいって弁当のオーダー能力で、他はどこのコンビニも大差が無い。あとは、店員確保のルートを持っているかだ。大学の留学生のツテを持つ店は強い。留学生が仲間を紹介してくれるからだ。人材確保で重要なのは、人脈とネットワークだ。このような経営環境にあるコンビニエンスオーナーが、他の事業で経営を拡大している話は、まず聞かない。それどころか、現場に縛られて疲労困憊の極にある。この辺りは、介護事業経営者も同じだ。介護事業のコンビニ化のもう一つの意味である。

余談だが、

ローソンの元々の母体はダイエーである。そのダイエーが店舗縮小で希望退職を募ったとき、その退職金を元手にローソンを開業した元ダイエー社員が多かった。10年以上前にローソンを開業したオーナーは、元ダイエー社員が多い。すなわち、ローソンはダイエーの人員削減社員の受け皿でもあったのだ。

本題に戻る。

経営母体が上場企業である場合も同様だ。安定したビジネスモデルを選択した参入が最優先だったからだ。何故なら、誕生して20年に満たない介護業界には十分なエビデンスデータが存在しない。成功要素は、現状におけるベストなビジネスモデルを周到するしか無かった。

すなわち、上場企業も、開業したばかりの零細会社も、殆ど同じ立ち位置で事業を行っているというだ。資金力以外の差は殆どない。このことに気づいているだろうか。これは、私の講演に多くの上場企業関連の関係者が参加し、一部の法人との関わりがあるから断言できる。

介護関連ベンチャーとして成功するには、「新商品開発」「価格設定」「広報PR」への取組が不可欠だ。そこにオリジナリティが重要な要素として加わる。さらに介護業界では敵視されがちな「営業」だ。

介護分野へのベンチャー参入を支援する。すなわち事業拡大を志向して、オンリーワンを確立する。大手が気づく前に市場を支配する。その為には、動きながら考える事が重要。

成功事例の発表や探求が盛んだが、今の成功事例は将来の衰退モデルとしての参考に留めるべき。6年以上前に成功事例とされた介護事業所や施設の多くは、今は見る影も無い。高齢者住宅の成功事例は、倒産に陥ってたところも多い。

それ以前の問題として、人のモノマネで事業を行っても所前は2番煎じでしか無いのだ。決して1番にはなれない。では、なぜ成功事例に人が群がるのか。理由は考えなくて良いから。簡単だから。それは経営努力では決して無い。事業としての成長を放棄したと同じでは無いのか。

これは、今年中に取り組むべきテーマである。それは令和3年制度改正の方向が見えてきていて、今年中に新規事業に取り組む事で5年先まで見通せる環境にあるからだ。今年の起業は、最も制度改正リスクが少ない経営環境で事業がスタート出来る、6年に一度の好機なのだ。

出来ない理由を探せば、いくらでも出て来る。それで安心することになれていると、絶対に一歩は踏み出せない。やる理由は限られる。だから、やると決断する経営者は一部に限られるし、成功者は、さらにその中の一部に限られる。しかし、一歩を踏み出さない限り、その先は無い。

何をやるかでなく、誰とやるかだ。まずは、このテーマに関心のある経営者と共に、経営研究会などを企画しようか。結果は後から着いてくる。

派遣社員に頼らざるを得ない

介護業界は雇用する職員が集まらずに、派遣社員に頼らざるを得ないのが現状だ。

しかし、派遣社員で人員基準を満たせると言うことは、人が居ないわけではない。また、介護の仕事を選ぶと言うことは、介護の仕事が嫌いな訳ではない。雇用されることを嫌う者が増えたと解釈すべきだ。それはどういうことか。

なぜ、派遣を選ぶのか? 給与だけが問題では無いようだ。時給が高くても賞与が無い事も多く、処遇改善加算手当の対象外だ。トータルでは余り変わらない。

派遣のメリットは、サービス残業がない。契約の時間に定時で帰れる。プライベート時間を確保出来る。人間関係で悩んだら職場を簡単にチェンジできる。契約は三月更新で辞めやすい。と言ったところか。

逆にデメリットは、派遣は最長三年で終了。ボーナスが無い。退職金が無い。将来が見通せない。などであろう。

すなわち仕事への価値観が変わってきたと言うことだ。付き合い残業や職場優先主義への反旗である。経営陣の考えも変える必要がある。

派遣社員と同じ環境で働けるのであれば、人は雇用されることを選ぶのではないか。その場合、人件費は大きく削減される。

時代と共に、人の価値観も変わりつつあるのだろう。何でもブラック、ブラックとつるし上げる風潮も問題だ。すでに体育会系の考え方は批判の対象でしか無い。

ならばどうするか。

政府は団塊ジュニア世代の雇用対策に600億円の予算を閣議決定した。この世代は、定職につく者が少なくて派遣などで凌いできた世代だ。

その世代が45才を向かえて、年齢もあって派遣先も見つからず、社員としての雇用も期待出来ない問題に直面している。それは本人が悪いわけでは無い。

バブルが崩壊した直後に就職期を向かえて、就職氷河期、ロスジェネ世代と言われる不遇な時代に直面したことが大きい原因だ。


国内全体を見ても、終身雇用制が崩壊し、欧米並みの能力主義に移行する時期と重なる。同時に、生活が安定しないことから、結婚もせず、子供も居ない者が多いのが特徴だ。

将来は生活保護に頼らざるを得ないだろう。これが団塊ジュニア世代が65才を迎える2040年問題の本質でもある。

この事実をどう捉えるのか。 

   

団塊ジュニア世代でビジネスモデルが一変する

団塊ジュニア世代が45才を迎え、2040年には65才を迎える。現時点での利用者は、85才以上となっていく。重度者が増えて、介護事業も重度者対応が必須となる。医療との連携も同様だ。

介護サービスの利用者層の世代交代が今後20年で進む。

今の利用者の中心は団塊の世代である。2017年の総人口は633万人。これに対して団塊ジュニア世代は795万人とされる。

団塊の世代と団塊ジュニア世代は真逆の状況にある。

団塊の世代の多くは定年まで勤め上げて、十分な退職金を手にした裕福な者が多い。

年金も、最低限の生活を営む程度は支給されている。

団塊ジュニア世代は、就職の超氷河期、ロスジェネと言われて非正規雇用の者が多い。

そのため定収入や生活が安定しないなどの理由から、未婚者や子供のいない世帯が多くなっている。

このことは、人口ピラミッドを見ても、団塊の世代の子供の世代が団塊ジュニア世代であるに対して、団塊ジュニア世代の子供の世代としての膨らみがないことから明らかだ。

雇用が安定しない状況で壮年期を迎え、これから高年期に入る。

ということは、今後の雇用状況が一層に深刻化することを意味する。日本の雇用事情では40才を超えると非正規雇用であっても雇用環境は悪化の一途だからだ。今後は年金も掛けることが出来ず、健康保険の支払も出来ない者が増加するだろう。

高年期になっても、子供がいないし、年金も掛けていないので貰えない者が多い。言い換えると、生活保護予備軍が急増する。

これが2040年問題の本質であることは以前にも書いた。

その対策として国は、団塊ジュニア世代の雇用対策として600億円の予算を計上したのだが、機を逸した感が強い。

仮に政策が功を奏して団塊ジュニア世代の生活環境が改善されたとしても、出産適齢期を既に過ぎているために、人口の増加には寄与しない。

これによって、日本の労働人口は減少の一途をたどることが確定した。日本人がいなくなっていく。

この辺りは、ノンフィクション作家の中村敦彦先生の著書や発言に表されていることだ。先入観に囚われず、一読をお勧めする。

団塊ジュニア世代の分析は、日本総研の報告書が参考となる。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/…/jrireview/pdf/11093.pdf

これらのことを介護マーケットで考えた場合、2040年以降の利用者層は、今の利用者と同じく考える事ができない。生活保護者が多く、介護サービスの利用者負担に耐えられない者が確実に多く存在する時代となる。

年金を掛けていないということは、介護保険料を払っていない事から、介護保険サービスは利用出来ないことを意味する。

それ以前の問題として、国民皆保険制度が崩壊している可能性が高く、年金の支給年齢も75才となっている可能性が高いのだが。

この時点で介護保険サービスや保険外サービスは、一定上の所得や蓄えを持つ階層に限定せざるを得なくなるだろう。介護保険自体も大きく縮小している可能性が高い。

しかし、それは20年後の世界の話、今の経営には関係の無い事だ。
はたしてそうだろうか。

いまでこそ、利用者の中心である団塊の世代は、自分の年金や退職金をベースに自助で何とか、やり繰りして介護サービスを利用出来る。

しかし、その資産が尽きたとき、その親を支える世代が団塊ジュニア世代だのだ。その団塊ジュニア世代の資力が乏しい。最悪の場合、親に頼っているとしたら、、団塊の世代は次第に自助が出来なくなることを意味する。

お分かりだろうか、介護事業に於ける2040年問題は、先行して迫ってくるのだ。

さらに団塊ジュニア世代の後の世代は、人口が減少の一途である。それは、学校や塾、アパレルや音楽産業の衰退にクッキリと現れていることだ。

この人口減少の影響の直撃を最初に受けるのは、障害福祉業界である。

実際に、平成24年に新設された放課後等デイサービスは短期間で飽和状態を迎えた。

今のブームである障害者グループホームも、今でこそ団塊ジュニア世代が新規利用者の中心であることから伸びているが、今後は対象者層は減少の一途となる。

ただし、入居期間が長いので、一旦満室になれば、その施設の経営は安定するが、新規オープンは次第に厳しさを増していくだろう。

これからのビジネスモデルは、これらのことを念頭に準備を進める必要がある。

だからといって、先に進まないのは愚の骨頂である。現状維持を望むなら経営者は辞めた方が良い。

介護業界に未来が無いのでない。このままでは、日本全体に未来が無いのだ。介護マーケット、シルバーマーケットは唯一と言って言い成長&安定成長マーケットである。ただし、介護保険制度はその一部に過ぎず、縮小の一途である。介護保険制度だけに頼る事は出来ない。そのことに気づいて欲しい。

今の大波もいつかは浜辺に辿り着いて波では無くなる。大波に乗った時点から次の大波を予測して、乗り移りの準備を進めなくてはならない。それが経営者や幹部職員の仕事である。

そんなこんなを含めて、早期に研究会などをスタート出来れば良いなと思う。

 


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